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文献紹介

[文献紹介] 森岡正博著,『生命観を問いなおす』,ちくま新書,1994年

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生命倫理を学ぶ者にとり必読の基本文献.この分野で,精力的に研究を進める森岡の一般向けの書物.その独創性のひとつとして,従来別個に探求されてきた生命倫理と環境倫理を一層深い次元(文明批判という観点から)で「生命学」として統合し,探求・展開するという点に求められよう
(だが,本書では,一般向けということもあり,生命学の詳細については触り程度しか触れられていないため,関心のある読者には『生命学への招待』へと読み進めることをお薦めしたい).
森岡は本書の「はじめに」で次のように記す.
「生命や自然が、いま、危機にさらされている」。そういう問題意識が、高まっています。あるひとは、西欧近代の機械論と産業主義が、現代の危機を生み出したと考えます。そして、それと対決し、それをのりこえることによって、現代の危機は解決に向かうのだと主張します。…(中略)…ここにあるのは、「我々の外部に敵がいる」という発想です。我々の外部の敵を撃破することで、問題は解決に向かうと考えるわけです。私は、本書で,この考え方に,くりかえし疑問を投げかけたいと思います.私は異なった意見をもっています.敵は,私たち自身の内部にひそんでいます.現代の危機をひきおこした最大の原因は,私たち自身の内部にこっそりとひそむ,生命の欲望なのです」(七~八頁).
この冒頭に明瞭に語られているように、森岡は自らも含めた「私たち自身」にひそむ「生命の欲望」に分析のメスをいれていく。
自分自身の経験をひっさげて読むことをいやおうがなしに要求する議論の組み立ては、読むものを生々しい日常の中での思考へといざなう良書である。

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